「ちゃんと働いているのに、なぜか給料が少ない」
「残業代が払われていない」
「会社から賠償請求や商品買い取りの強制をされている……」
給料に関して、こんなトラブルを抱えてはいませんか?
労働に対して適切な給料をもらうのは、労働者の権利です。モヤモヤしたまま「仕方ない」と諦めず、しっかりと対応して、正当な給料をもらいましょう。
ケース1:給料がどう考えても安すぎる
1日8時間、週40時間以上働いているのに、どう考えても給料が安い。
ムダ遣いしていないのに、なぜか生活がいつもギリギリになってしまう……。
そういう場合、給料が最低賃金を下回っているかもしれません。 最低賃金は、時給で働いているアルバイトや契約社員はもちろん、日給、月給をもらっている人にも適応されます。
月給だと最低賃金の時間給を意識することは少ないでしょうが、一度時給になおして計算してみましょう。
まずは最低賃金をチェック
まず、働いている都道府県の最低賃金をチェックしてみましょう。たとえ神奈川県に住んでいても、勤務地が東京なら東京の最低賃金が適応されます。
(リモートワーカーや出張が多い人などは、窓口で相談するほうが確実です)
また、「地域別の最低賃金」とは別に「特定最低賃金」が定められてる業種があります。
たとえば、鉄鋼業や自動車小売業、百貨店やスーパーなどです。
都道府県によって特定業種も変わるので、勤め先の特定最低賃金にも目を通しておきましょう。
地域別・特定最低賃金のうち、高い方が適応されます。
自分の時給を計算してみよう
月給や日給を時給に計算しなおす際には、各手当などの金額も考慮しなくてはいけません。給料明細があれば、それを参考に、この式に当てはめて計算してみましょう。
(基本給+諸手当)÷月平均所定労働時間
残業代やボーナスなどは含まれません
※ただし、諸手当から「通勤手当」「精皆勤手当」「家族手当」「割増賃金」は除く
出典:自分の勤務先はブラック企業か否か? ~給与明細からチェックする方法を教えます~
ですが、ふだん自分がどんな手当てをもらっているかを意識することって少ないですよね。
「正直よくわからない」という方は、厚生労働省のページから簡易的に計算できるので、こちらのサイトを使ってみてください。
あなたの賃金を比較チェック
あなたの賃金を比較チェック!
出来高制、請負制などで最低賃金が計算しづらいときは、こちらのサイトが参考になります。
給料が最低賃金以下の場合は差額を請求できる?
支給日から2年以内なら、基本的に差額を請求することができます。 請求する場合、以下のような方法があります。
1.ご自身の給与を計算(【対象となる月給×12ヶ月÷年間総所定労働時間】し、最低賃金を下回っていることを確認する。
2.会社側に内容証明郵便でその旨を記載して送付する。(賃金の請求は労働者の正当な権利なので、自信をもちましょう)
出典:あなたの弁護士
ひとりで行動を起こすのは不安……という場合、一度窓口や弁護士に相談してから行動を起こすと心強いでしょう。
ケース2:残業代が支払われていない
「17:00にタイムカードを切った後も働かされている」
残業したはずなのに、残業代が支払われていない。タイムカードを切ってから残業を命じられる。
持ち帰り残業をせざるを得ない状況になっている……。
残業代について不信感がある方は、それが法律に違反していないか、一度調べてみましょう。
残業代についての基本的な法律 -時間外労働と法内残業-
そもそも、「残業」ってなんでしょう。残業には、2つの種類があります。
- (法定)時間外労働
労働基準法で定められた労働時間(原則は1日8時間、1週40時間)を超えて行われた残業のこと - 法内残業
会社が定めた所定労働時間を超え、労働基準法で定められた労働時間以内の範囲で行われた残業のこと
国が決めた労働時間を超えたものと、会社が決めた労働時間を超えたものの2パターンがあるということですね。
残業代はどちらにも発生しますが、割増賃金が義務付けられているのは国が決めた労働時間を超えた場合となります。
また、電話番としていつでも働けるようにしていなくてはいけない時間、決められた作業着に着替える時間、仕事に必要な資料を作る時間なども、労働時間に含まれます。
形式だけの休憩、ちょっとした雑務などにも注意です!
持ち帰り残業でも残業代は発生する?
残業代・残業時間をごまかすために、従業員に持ち帰り残業をさせる会社もあります。 持ち帰り残業は実態が把握しづらいので、企業は「あくまで自主的なもの」として残業代を払わないことが多いようです。
ですが、残業代を支払わなくてはいけない場合もあります。 たとえば、終業時間直前に「これを明日までにやれ」と指示されて持ち帰り残業をしたとき。
これは、労働時間にあたると判断されることが多いようです。 とはいっても、上司が指示したことを証明したり、労働時間の計算をしたりというのは、素人ではむずかしいですよね。
持ち帰り残業をしなくてはいけない状況になった場合、何時から何時まで、どこでどんな仕事をしたのか、なぜ持ち帰り残業になったかなどをしっかりと記録に残しておきましょう。
記入例
【いつ】
20○○年○○月○○日
○○時○○分 〜○○時○○分まで
【どこで】
【仕事内容】
【なぜ持ち帰り残業になったか】
もし残業代を請求したくなった場合、こういった記録が大切になります。
残業時間の切り捨てはあり?なし?
サービス業でありがちなのが、残業時間の切り捨てです。わたしが以前働いていたところでは、タイムカードが30分刻みなので、29分以下の労働時間は切り捨てされていました。
ですが、基本的に残業時間は1分単位で計算されなくてはいけません。企業側の都合で、勝手に切り捨ててはいけないんです。 残業時間の切り捨てについての決まりは、このようになっています。
- 1か月の残業時間(時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の労働時間)の合計に、1時間未満の端数がある場合 30分未満の残業時間を切り捨てる
- 30分以上の残業時間を1時間に切り上げる
端数処理が認められているのは、「1か月の残業時間」であり、「1日の残業時間」ではありません。1日の残業時間で、30分未満を切り捨てることは違反となる
- 1時間あたりの賃金額及び残業代に、1円未満の端数が生じた場合 50銭未満を切り捨てる
- 50銭以上を1円に切り上げる
- 1か月の残業代(時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の残業代)の総額に、1円未満の端数が生じた場合 50銭未満を切り捨てる
- 50銭以上を1円に切り上げる
こういった場合は、企業が端数を切り捨てることができます。
ですがあくまで「1ヵ月単位」の計算なので、企業が勝手に「1日単位」で10分、20分と切り捨てるのは認められません。
1日単位で残業時間を切り捨てられている場合、一度交渉してみることをおすすめします。
「みなし残業」制度なら残業代はもらえない?
最近、「みなし残業」という言葉が浸透してきました。残業代の話をしても、「うちはみなし残業だから」なんて断られている方もいるかもしれません。 ですが、「みなし残業だから残業代が絶対にもらえない」なんてことはないのです。
みなし残業には、2つのパターンがあります。 ひとつは、「想定している残業代を支払う」パターン。 次の3形態があります。
- 事業場外のみなし労働時間制:直行直帰の営業や在宅勤務者に適用
- 専門業務型裁量労働制:コンサルタントや研究者など専門職に適用
- 企画業務型裁量労働制:経営企画室スタッフなどに適用
これらの労働者に関し、労使協定で合意した時間数が法定労働時間の8時間以内であればみなし残業が発生する余地はないのですが、合意された時間数が8時間以上となる場合は、合意された時間と8時間との差が、みなし残業時間となります。
たとえば、労使協定で10時間と合意された場合は、2時間が1日のみなし残業時間であり、定時に帰った日も、4時間残業した日も、賃金計算上は2時間の残業をしたものとして扱われることになります。
出典:みなし残業とは?会社員なら知っておきたい、みなし労働に関するトラブルと対処法
もうひとつは、「給料に残業代が含まれている」パターンです。給料に「(〇万円の残業代を含む)」などと書いている場合が、それにあたります。(この場合、残業代を抜いた基本給が最低賃金を下回っていないか調べるといいでしょう)
- 想定している残業代を支払う場合
- 給料に残業代が含まれている場合
どちらのパターンであっても、決められた残業時間以上働いたら、さらに残業代をもらう権利があります。
「みなし残業代だから」といっていくら働いても残業代がもらえない、なんてことはないのです。 「みなし残業って聞いてるけど、何時間分の残業が考慮されているんだろう?」と疑問に思った方は、契約書や労働条件をもう一度確かめてみてください。
残業代を請求するときはどうすればいい?
いざ「残業代を請求するぞ!」と思っても、なにからはじめたらいいかわからないですよね。 残業代の請求に関しては、こちらのサイトがとても参考になります。
証拠となりやすいもの、なりにくいもの、典型的な会社の言い訳などが網羅されているので、残業代を請求する予定の方は目を通しておきましょう。
ケース3:損害賠償、買い取り、ペナルティなど支払いを要求される
パワハラのなかでも特に悪質なのが、「お前がミスしたんだから賠償金を払え」「会社の損失を補てんしろ」といった賠償請求です。
ほかにも、売れ残りを買い取らせたり、ノルマ未達成のペナルティを要求したり、なんてこともあります。
仕事を失うのが怖い、自分が悪いから仕方ない……と諦めて払うまえに、本当に払う必要があるのか、しっかり確かめてくださいね。
損害賠償を払う必要がある場合とない場合
損害賠償に関しては、以下の2つがポイントになります。
1. 労働者が業務の遂行に当たり会社に損害を与えた場合、故意による違法行為による場合を除き、労働者の損害賠償責任は制限されるのが一般的
2. 労働者が突如辞職した場合、損害賠償責任が認められる可能性はありますが、裁判例において実際に労働者の責任が認められることは稀
出典:みなし残業とは?会社員なら知っておきたい、みなし労働に関するトラブルと対処法
かんたんに言えば、
「わざと犯罪を犯したわけでなければ、労働者だけが損害賠償の責任を負うことは少ない」
「突然辞めたことで問題になったとしても、労働者が責任を丸かぶりすることはあまりない」ということです。
犯罪とは、たとえば会社のお金を使いこんだとか、自社情報を流して利益を上げていた、などです。
そういう場合でなければ、企業と労働者が責任を分担するのが一般的で、労働者だけが責任をとらされることは少ないといえます。
もちろん「絶対にない」というわけではありませんが、レジのミスを従業員に補てんさせたり、ノルマ未達成で罰金、売れ残り品の強制買い取りなどは、違法と判断される可能性が高いです。
理不尽はな損害賠償請求には断固拒否
仕事をしていれば、うまくいくこともありますし、うまくいかないこともあります。
失敗してしまったときに「損害賠償」と言われると、精神的に追い詰められますし、思わず払ってしまうかもしれません。 ですが、利益は会社のもの、責任は労働者のもの、なんていうのは筋が通りません。
都合の悪いときだけ労働者にすべて責任をなすりつけるのは、悪質なブラック企業の典型的なやり口です。
損害賠償請求をされた、勝手にペナルティが天引きされている……などの具体的な対応としては、こちらのサイトが参考になります。
https://roudou-bengoshi.com/taishoku/343/#4
当サイトには、度重なる損害賠償請求やパワハラで、自殺してしまった方の体験談も寄せられています。
亡くなった後に見た彼の携帯に「また○○万円会社に払わなきゃいけない」とメッセージが残っていました。
彼が亡くなる直前、彼は電話の向こうで泣いていて、 「またミスが出てしまった。辞めてもミスがわかり次第損害を請求すると言われた。 俺は一生苦しまなきゃいけないのかな?上司に自殺しろって言われた。」
#BUZZGO 過労死とブラック労働 「婚約者が過労自殺」 より
本当なら拒否するのが一番なのですが、そんな余裕がないときは、だれかに相談して仕事を辞めることも検討してみてください。 正当な報酬を得ることは大事ですが、一番大切なのはもちろん、あなたの命です。
給料に関する理不尽なトラブルに遭った時の対処法
この記事で紹介した法律や対処法は、あくまで一例です。 労働契約書や面接時の取り決めでちがうルールが適応される可能性もありますし、事情によっては対応が変わってきます。
そのため、最終的には専門家に相談するほうが安心・安全です。 「専門家に相談」というと、お金がかかってむずかしい話をされて上司にバレて……とネガティブな印象を持ってしまうかもしれませんが、そういうわけではありません。
匿名で無料電話相談ができる窓口がいくつもありますし、口で説明するのが苦手なら、データを添付したうえでメールで相談できる窓口もあります。
また、労働問題に力を入れている弁護士もいます。 モヤモヤする、知りたいことがある、なにかがおかしい。 そう思ったときは、「大騒ぎしなくても」と思わずに、専門家に一度相談してみましょう。
ひとりで悩み、追い詰められてしまう前に、差し伸べられている手を取ってみてください。窓口の方は慣れているので、思いのほかすんなりと解決するかもしれません。 相談先は、こちらの記事にまとめています。
ライター / 雨宮紫苑
編集 / テンジク