労災補償制度とは?
学校に通っていたとき、「通学中の事故や授業中に起こったケガは特別な保険がおりる」なんて聞いたことはありませんか?
それと同じで、仕事に行くときや仕事中にケガをしたり、業務のせいで病気になってしまったときは、労災補償制度を利用できます。
- はたらいている人が通勤中や仕事を通じてケガをしたり病気になったとき、給付金をもらえる
- 労働災害にあったとき、社会復帰できるように手助けしてもらえる
- お金をもらって働いている人はみんな当てはまるので、アルバイトや日雇い労働者にも適用される
参考→労災補償(厚生労働省)
労災保険の種類は…
今回は、それぞれの制度について紹介していきます。
通勤災害
家と仕事場のあいだで起こったケガや病気があてはまります。
参考:合理的経路
通勤の形態
1.通常の場合
2.複数就業者(かけもち)の場合
3.単身赴任者の場合
※2、3については一定の要件がありますのでご注意ください。
合理的経路から出てしまったときには「通勤」と認められません。
業務災害
業務によるケガ、病気、障害、死亡は、労災として認められます。 「業務による」の判断基準は、このようになっています。
労働時間内や残業時間内に、仕事場(事務所や工場など)で働いているなかで起こったときは、基本的に業務災害として認められます。 わざとケガをしたり個人的な恨みでトラブルが起こったり、というのはダメです。
オフィスにいるけど休憩中で仕事はしていない、私的な行動で起こった災害は、業務災害にはなりません。ですが、トイレなど生理的行為のときに生じた災害や、職場の施設の不備や管理状況のせいで災害が起こったら、業務災害になります。
出張や営業の外回りなど、オフィスや工場にはいないけど仕事はしている、というときに起こった災害は、業務災害と認められます。※
※業務による病気とは、たとえば身体的負担がある環境で働いていて病気にかかることを指します。「職業病」というとわかりやすいでしょうか。 疾患によって認められる条件がちがうので、
↑こちらのガイドブックの9ページから12ページを読んでみてください。
について書かれています。
精神障害の労災認定については、こちらのリーフレットが参考になります。
セクハラによる精神障害も労災として認められるので、そういう人はこちらを読んでみてくださいね。
参考→セクシュアルハラスメントが原因で精神障害を発病した場合 (厚生労働省)
療養給付
業務や通勤のときに起こった労災が原因で療養が必要になったとき、無料で治療や薬を受け取れます。さらに、通院費の補償もあります。 この給付は、ケガや病気が治癒するまでのあいだ適応されます。
完全回復というわけではなく、症状が安定して、一般的な医療を行ってもこれ以上は効果はないだろう、と判断される症状固定状態のこと
通院費については、こちらにまとまっています。
→通院費も支給されるのでしょうか?(労働基準行政全般に関するQ&A)
医療機関にかかるとき、クセで健康保険証で受診してしまうかもしれません。ですが労災には健康保険は使えないので注意してください。
もし健康保険証で受診してしまったときは、こちらを読んでみましょう。
参考→健康保険証を使って受診してしまいました (労働基準行政全般に関するQ&A)
休業給付
労災によって療養が必要になり給料がもらえない場合、補償金を受け取ることができます。
給料を受け取れなくなった日から2年経つと時効になってしまう
休業給付=給付基礎日額の60% × 休業日数 ・休業特別支給金=給付基礎日額の20% × 休業日数 となっています。
「休業とまではいかないけど、週1回休んで病院に行かないといけない」
というときも、休業補償をもらえます。 傷病年金 以下の条件にあてはまる人は、傷病年金を受け取ることができます。
- 業務や通勤が原因のケガや病気で療養をはじめて、1年6ヶ月経過している
- そのケガや病気がまだ治っていない
- 傷病等級表に当てはまること
※注意書きを入れる
年金の金額は、傷病の等級によってちがいます。 金額についてはこちらの16ページにくわしく載っているので、見てみてください。
参考→傷病等級の金額労災保険のためのガイドブック(16ページ)
障害給付
業務や通勤によるケガや病気が治っても、からだの一部に後遺症が残ったときには、給付金を受け取れます。 金額は等級によって変わるので、障害等級表(18ページ~)を参考にしてください。
参考→障害等級表 労災保険のためのガイドブック(18ページ)
障害年金は1回だけ前払いしてもらうこともできます。詳しくは22ページ。
参考→障害年金の前払い 労災保険のためのガイドブック(22ページ)
ケガや病気が治った日の翌日から5年経つと時効となる
遺族・葬祭料
業務や通勤によってだれかが亡くなった場合、遺族は遺族年金や遺族と区別し給金、遺族特別年金を受け取れます。
- 請求書
- 死亡診断書
- 戸籍謄本
- 戸籍謄本イラスト
- 生計維持関係を証明する書類(民生委員の証明など)
- ほかの年金を受けているときはその証明書
参考→遺族補償給付を請求するにはどのような資料を準備したらよいのでしょうか?(厚生労働省)
- 配偶者
- 子供
- 親
- 孫
- 祖父母
- きょうだい
受給資格や給付内容については、ここにまとまっています。
参考→遺族年金(厚生労働省)
葬儀に関しては、遺族だけではなく、葬儀を行った人に一定額が支払われます。金額や手続きなどはこちらを参照にしてください。
遺族年金と一時金は被災者が亡くなった日の翌日から5年経つと時効、前払一時金と葬祭料はは翌日から2年で時効になります。
介護給付 障害年金、傷病年金の第1級の人、第2級の精神神経・胸腹部臓器に障害がある人は、介護補償給付、もしくは介護給付をもらうことができます。
介護が認められるのは、「常時介護が必要な状態」、もしくは「随時介護が必要な状態」のときです。
該当する方の具体的な障害の状態 | |
常時介護 | ①精神神経・胸腹部臓器に障害を残し、常時介護を要する状態に該当する方(障害等級第1級3・4号、傷病等級第1級1・2号 )
②・両眼が失明するとともに、障害又は傷病等級第1級・第2級の障害を有する方 |
随時介護 | ①精神神経・胸腹部臓器に障害を残し、随時介護を要する状態に該当する方(障害等級第2級2号の2・2号の3、傷病等級第2級1・2号) ②障害等級第1級又は傷病等級第1級に該当する方で、常時介護を要する状態ではない方 |
給付内容や請求の手続きに必要なもの
介護を受けた翌月1日から2年経つと時効となる
法定外補償制度があるかも調べてみよう
労災補償制度のほかに、法定外補償制度というものもあります。上場企業のような大きな会社では比較的多く導入されている制度で、国の補償とは別に、労災にあった人への補償をするものです。
たとえば障害が残ったときの給付金を支給したり、休業中もポジションを守ったりなどがあります。 この制度は企業が導入しているかどうかによって対応がちがうので、気になる人は問い合わせてみるといいでしょう。
ライター / 雨宮紫苑 (@amamiya9901)
編集 / テンジク